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介護保険制度とは?〜介護の社会化は成功したのか〜

      2015/09/23


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1997年に制定され2000年の節目に施行された介護保険法。その本来の目的は達成されたのでしょうか。

介護保険制度とは?〜介護の社会化は成功したのか〜

 

介護保険制度とは

介護保険制度の基本的な仕組みを確認しましょう。

・高齢者介護に家族だけでな多くの人仕事として参加することで、社会全体が支える仕組み(=介護の社会化)。また、公的機関だけでなく、営利を目的とする株式会社やNPOなど様々な事業者が算入できる仕組み。

・介護を受ける高齢者一人に金銭的負担を集中させず、40歳以上の国民が保険料を支払い支え合う仕組み。

・介護保険制度の運営は国でなく市町村と特別区が行う。保険料のほか税金も投入される。

介護保険制度創設の3つの意義

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① 「介護の社会化」に対する国民の関心が高まった

② 「介護の社会化」に不可欠な介護基盤の整備(ホームヘルパーや高齢者入所施設など)が一定程度進んだ

③ 中高所得者層中心に「介護の社会化」が進みサービス利用が普及した。

※約70%は居宅サービス利用、約20%が施設入所、約8%が特定施設やグループホームの居住系施設入所。

介護の社会化は中高所得者層に限定される

介護の社会化は低所得者層のなかにも浸透したのでしょうか?

介護保険制度の仕組みは下のようになる。

・65歳以上の第1号被保険者は、年金から月額1万5000円以上の保険料が天引きされる。

・サ-ビス利用の際の1割を自己負担し、支給限度額を超えるサービスは全額負担となる。

要介護者になる確率は所得と相関関係にあり、要介護高齢者は低所得者層に多いと言われている(『社会保険旬報』近藤克則、 2073:6-11,2000)。

しかし、所得の低い人ほど、介護保険サービスの利用を控え「家族介護」に依存するしかないと思われる。

65歳以上高齢者を対象にして、所得と要介護(支援)出現率の関係を年齢や性別等をコントロールしたうえで、ロジット分析を行った。その結果、年齢が5歳上がると、要介護リスクは1.8倍,そして所得が100万円下がると1.7倍になり、100万円の所得減少と5歳加齢とほぼ等しい効果があると報告している。

※ロジット分析 … 統計分析手法のひとつ。

出典:『社会保険旬報』近藤克則、2073:6-11,2000

引用した結果は所得減少が要介護者の出現に影響を与えていることを裏づけるものといえる。

介護保険制度は「所得格差」がそのまま「介護格差」につながる制度と言ってもよく、「介護の社会化」が実現されたのは、中高所得階層や富裕層が中心だと思われる。

介護の社会化は介護保険制度改正のたびに後退

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介護保険制度は介護の社会化のために前進しているのでしょうか。

介護保険制度導入時に盛んに喧伝された介護「社会化」の理念は、制度の持続可能性、財政抑制という大義名分のもとで「改正」の都度「形骸化」し、逆に、高齢者介護における「家族の介護責任」が厳しく問われる時代になっている。

少子・高齢化によって、若年労働者の減少と介護を必要とする高齢者の増加がおこり、労働者は家族の介護と仕事の両立、またはどちらかの選択を迫られるという状況が生じている。これでは、むしろ介護の「社会化」から後退した介護の「再家族化」であり、介護保険制度の土台が揺らぎ、軋みはじめていると考えられる。

 まとめ … 介護を個人や家族の負担から解放し「社会化」を促進するのが介護保険の本来の目的。しかし、低所得者層には浸透せず、改正のたびに「再家族化」への後退も見られている。

 

介護保険制度を足がかりに本当の介護へ

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介護の社会化は道なかばですが、その意義をどのように捉えればよいのでしょうか。

介護の目的は、介護を必要とする人々が、自分的能力を活用しながら自分らしく尊厳をもって生きられるよう、QOL(Quality of life;生命、生活、人生の質)の向上を図ることにある。これは個人が安心して成熟社会の恩恵を享受し、生活の質を高めるという点でも、また、家族がその絆を保ち、生活力を向上させるうえでも不可欠の課題である。

人間は誰でも、よりよい自己を求めてその人なりに努力をし続けている。自分らしく、力強く生きたいと願っている。しかし、障害や加齢、疾病による諸機能の低下に加え、家族の介護機能の低下に加え、地域の介護力や福祉力、教育力の脆弱さのために、存在感をなくし、孤立していく人も多い。

社会全体がゆとりをなくしているなかで介護従事者によって担えられる受容や共感、暖かい関係は、主体的な行動を支える原動力になっている。心のふれあいは、人を育み、生きる意欲を引き出すものである。介護を必要とする人々のためになることをすること、それに基づく人間と人間のあたたかい交流は生きがいであり自己の存在を肯定させてくれるものである。

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