介護保険8つの問題点(5)介護保険施設月額利用料の相場~入所困難な場合も~
2015/09/23
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老人ホーム月額利用料の相場と低所得者の実状について分析しました。介護保険の8つの問題点をひとつひとつ明らかにしていきます。
介護保険8つの問題点(5)老人ホーム月額利用料の相場と低所得者の実状
介護保険施設(老人ホーム等)には介護保険自己負担分に加え「食費・居住費」も必要
介護施設(老人ホーム等)への入所にはどの程度の費用が発生するのでしょうか
老人ホーム入所にかかる経費は介護保険による「介護福祉施設サービス費」の利用者負担分のほか、食費・居住費などの自己負担がある。居住費についてはその施設が「ユニットケア」(※)の導入をしているか否か、また入所者の居住スペースが個室であるか、多床室(いわゆる相部屋)であるかによって変わってくる。
※ユニットケア … 配属された職員が患者、入居者、利用者の看護、介護、要望及び苦情に迅速かつ柔軟に判断、対応ができるよう、規模を縮小した看護・介護の提供態勢。
介護保険施設月額利用料の動向
介護保険が使える施設は在宅介護型施設と入所介護型施設に分かれている。
入所介護型施設としては、「介護老人保健施設(老健施設)」「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護療養型医療施設」等がある。
それらの月額利用料は各種調査によると以下の通りである。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 約8万1,000円~12万8,000円
介護老人保健施設 約8万3,000円~13万円
介護療養型医療施設(療養型病床群など) 約8万9,000円~13万9,000円
有料老人ホーム(介護型) 約15万円~25万円
ケアハウス 約7万円~20万円
(2012年厚労省の各種調査より作成)
低所得階層のお年寄りは介護施設(老人ホーム等)への入所が困難
高齢者世帯においては、それまでの生涯を反映して所得のばらつきがかなり大きい。ぎりぎりの収入、貯蓄ゼロ、不十分な住環境でなんとか生活している高齢者も少なくない。
65歳以上の世帯員1人当たり平均所得金額は、総数537.2万円に対し309.1万円、世帯人員1人当たり平均所得金額は、総数225.8万円に対し214.9万円である(平成25年「国民生活基礎調査」)。
介護保険施設は、月額利用料が、約7万円~25万円必要で低所得階層の人々は自力での支払いは困難で、入所困難の方が多いと思われる。
無料、低額の恩恵を失う低所得階層者(生活保護者を除く)
介護保険では、基本的に利用する介護サービス費用の1割が自己負担額となる。介護保険実施前、無料や低額でサービスの利用が可能であった低所得階層者のサービスの利用を抑制している。
保険が適用される支給限度基準額(=利用できるサービスの合計金額)は、その人の重症度に応じて異なる。重症であればあるほど、支給限度基準額が高くなるのだ。さらに支給限度基準額を超えて介護サービスを受けた場合、全額が自己負担となる。低所得階層者にとっては、重症になればなるほど利用しづらい面がある。
生活保護者に関しては保険料・1割負担分とも国が負担
生活保護受給者も介護保険に加入し、介護が必要になった場合には、通常の手続きにより介護保険から介護を受けることになる。保険料は生活保護費に加算され、また介護保険から介護を受けた場合の1割負担については生活保護から支給される。
(2015年9月8日改訂)
所得とは別に「保証人」の問題も
「独居者」の「施設」入所、「賃貸住宅」入居時には「保証人」が必要のところが多く、その確保がお金もかかり大変である。
「これは、退転院援助を担っている多くの医療ケースワーが共通して問題視していると思われる問題でもある。保証人が確保できない場合、無認可施設へお願いせざるを得ないこともある」(医療ケースワーカH氏談)
医師の介在が必要な場合も入所は困難
特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型医療施設は、胃瘻(いろう)、経管栄養、気管切開、喀痰吸引、褥瘡などの「医療依存度の高い人」は「入所、入院が制約されている」。
在宅型にも経済格差〜低所得者層は限度額までサービスを受けられない実態〜
必要な介護量として想定されている要介護度別の(支給限度)基準額を使い切る人はほとんどおらず、2010年7月の介護給付費実態調査報告に基づいて算出すると、在宅サービスの利用額は支給限度額の4割~6割程度でしかない。
また、同一の要介護度であれば利用額は一定水準にまとまるはずだが、例えば、要介護3~5のうち、自己負担が1万円未満の人が1/3もおり、サービス利用の格差も指摘されている〔池田2007〕。こうした介護サービスの利用量の格差が、利用者の所得水準の相違によって生じているならば、誰もが自由に必要なサービスを利用できるという普遍主義の原理に反する重要な問題である。
※参考・引用文献 11 明星智美「介護保険における所得階層別利用状況」2001、久留米大学文学部紀要
生活保護世帯は、保険料も自己負担も発生しない。むしろ、家計状況でいえばその「上」に属する住民税非課税などのボーダーライン層の方が介護保険制度の活用は困難である。
(2015年9月8日改訂)
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