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川崎の老人ホーム転落 事件なのか事故なのかを分析

      2015/09/23


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川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で3名の入所者の方が転落「事故」でなく亡くなりました。

川崎の老人ホーム転落 事件なのか事故なのかを分析

 

有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」の場所と運営主体

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出典:施工会社による

①場所:神奈川県川崎市幸区幸町2丁目632-1
②アクセス:「川崎駅」および「京急川崎駅」から徒歩約9分。川崎駅西口を出て多摩川(東京寄り)へ向かい、川に突き当たったら左。幸町交番先。
③運営主体: 積和サポートシステム株式会社(代表取締役社長:岩本隆博氏)。積和サポートシステム株式会社は、株式会社メッセージの関連会社。

川崎の老人ホーム転落 事故なのか事件なのか

川崎市の老人ホーム転落事故。現在警察は事件、事故の両面から調査しています。

(1)単なる事故である根拠

運営主体の主張

①積和サポートシステム株式会社の中坪良太郎本部長はNHKの取材に対して「3人の転落死は事故だった」という認識を示しています。

②積和サポートシステム株式会社もHPに事故だとの認識を社長名で示しています。

 昨日より弊社施設「Sアミーユ川崎幸町」において、2014年11月から12月にかけて発生しました3件の転落死亡事故に関する件が報道されております。今回発生した事故につきましては、大変深刻に受け止めています
あらためて亡くなられたご入居者様のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族様には心よりお悔み申し上げます。
再発防止の取り組みは行ってまいりましたが、改めて「入居者一人一人の疾患や障害、心の状態などに合わせた対策」を行っていく所存です。
ご遺族の皆様、ご入居者の皆様、ご家族およびご関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

2015年9月7日
積和サポートシステム株式会社
代表取締役社長 岩本 隆博

出典:http://www.s-amille.jp/

上のように運営会社は「事故」と認識しています。再発防止の取り組みを強化するとのことで、ぜひ進めてもらいたいと思います。

一方で気になる言い回しが「ご心配」。近年のお詫び文の流行語になってしまいましたが、一般の人も関係者も十分な安全管理はできていたのかと批判的な気持ちはあっても、心配はしていないはずです。せっかくの低姿勢が、「ご心配」の一言で主体が同じ目線の高さに立ち現れる不快感を感じる人もいますのでぜひ改めてほしいです。

(2)事件の可能性をうかがわせる根拠

暴行の存在と言い争いの証言

2015年5月に「Sアミーユ川崎幸町」では入所者の頭を叩く、ベッドへ放り投げるなどの暴行事件が発覚しています。これは入所者の家族が居室にカメラを設置して判明したものです。これとは別に入浴中の入所者が亡くなる事故も起こしています。

さらにフジテレビの取材に、86歳の女性が亡くなった2件目の事故の直前に男女が言い争う声を聞いたという証言が出ています。具体的には「何言ってんのよ」など女性の声がして、(証言者自身が)寝床に入ったあと事故があったそうです。

これによりトラブルが原因で職員が犯行に及んだという見方も出てきています。


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(3)事件、事故の判断とは無関係な根拠

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以下の3つの情報は、事件でないかと憶測する文脈で用いられますが、冷静に考えれば無関係です。

①3回の転落場所が全て同じ(階は違うが上下同じ場所だった)

3回の転落場所が全て同じ。これによって事件性を疑う人がいますが、仮に事件だとしてわざわざ同じ場所で犯行に及び疑いを増すような行動をすることは考えにくいです。決めつけることなく冷静に考えたい部分です。

②3回とも同一の20歳男性が夜勤(別件で解雇)で「犯人では」との憶測も

3回の事件に同一人物、しかもトラブルで解雇された人物が絡んでいるとのことで犯人ではないかと疑いの目が向けられています。しかし、老人ホームは一定の従業員が早番、遅番、日勤、夜勤などのローテーションで勤務することが普通です。夜勤は5回前後と思われます。つまり6日に1回はこの社員の夜勤日に当たり、3回の「事故」がたまたま重なっても確率上はありえないことではないです。

③高さ1m20cmの手すりが設置されていた。

最後に亡くなったのは96歳の女性。深夜に1mを超える手すりを乗り越えて転落するというのは非常に不自然です。この女性の身長が140cm前後だったという証言もあるようです。ご自身の身長より20cm低いだけの手すりを乗り越えてしまうのはいかにも不自然で考えにくいのではないでしょうか。

さらにこの女性は普段シルバーカーを押して歩いていたとの証言もあるようです。体力的にも1m20cmの手すりを乗り越えるのは一般的には困難だと思われます。ベランダにパイプいすが置いてある場合もあったと報じられましたが、椅子に乗るには体力的に難しいようです。

一方で川崎市高齢者事業推進課は、事故にあった方の要介護度が「2」か「3」だったことから「寝たきり状態とはいえず、個人差はあるが1・2メートルの高さを越えることができる方がいるかもしれない」と話しています。

東京都で働く介護福祉士の話です。

どの「事故」も深夜に発生していますが、お年寄りは深夜にお手洗いに行くケースが多くなります。そして部屋やトイレの扉とベランダへの扉を間違うことなど日常茶飯事です。しかしベランダの手すりの高さから考えて、ベランダに出たあとに転落するというのは、踏み台を使ったりかなりの筋力が必要となり物理的に考えにくいです。あり得るとしたら、部屋から出るときに窓のサッシ等につまずき大きくバランスを崩すケースで、現場を見てみないと分かりませんが可能性はゼロではないです。ただし、要介護2、3級(注:数字が増えるほど重くなります)の方の場合、自力で歩いて洗面所に行けるのは2級の方の一部ではないでしょうか。3級の認定を受けている場合かなり難しいと想像します。

このように見てくると高さ1m20cmの手すりというのは、相当の現場検証を積まない限り事件事故いずれの証拠にもならないと考えられます。

全体として事件事故を決める決定的な根拠はなく捜査には時間がかかると予想されます。


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